中国共産党の犯罪 二

金正日独裁政権への支援

■日本の対北報道の変化
 小泉訪朝から5年、日本のマスコミの対北朝鮮報道は劇的に変化した。金正日政権を正面から批判するようになり、今や拉致問題は日本人で知らぬ者はいないほどの国民的関心事となり、ほかにも北朝鮮国内の飢餓や人権侵害は広く知られることとなった。今更私が北朝鮮の惨状について述べたところで、読者の既知の情報を超えることはなかろう。だがそれでも日本マスコミの北朝鮮報道には重要な視点が欠けている。中国の役割である。もちろん中朝関係にもそれなりにスポットが当てられているが、拉致問題や核問題や人権問題の解決を中国があらゆる手段で妨害していることを指摘する報道はほとんど見られない。

■中国にとっての北朝鮮
 10年以上前から言論界では北朝鮮体制はそう長くは持たないという観測が主流であったが、いつまで経っても金正日独裁体制は崩壊しない。あれほど民衆の暮らしは困窮し、あれほど過酷な人権侵害が行われているにもかかわらずである。そもそも北朝鮮経済は80年代にはかなり疲弊し、90年代前半にはとっくに破綻していたのだ。そして95年頃にはついに飢餓状態となり、98年頃までに餓死者は約300万人に達した。当の昔に北朝鮮の経済、国民生活は崩壊し、国家としての体をなしていないのである。それでも金正日独裁体制の転覆には至らない。その原因として中華人民共和国の存在は重要だ。
 中国にとって北朝鮮とはなんとも都合のいい存在である。朝鮮半島が南北に分断しているおかげで中国は米軍基地のある国と国境を接することがなくすんでいる。北朝鮮における極度の貧困、極度の人権侵害によって、中国共産党が行っている人権侵害のイメージが薄められる。日本人の多くは、中国は北朝鮮とは比べ物にならないほどましな国家と思っているのではなかろうか。中国共産党は南北統一など望んでいない。分断していたほうが好都合であり、統一はしても得することなどほとんどないのである。
 
■六カ国協議など茶番劇
 1995年のKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)発足後、しばらく落ち着いていた北朝鮮の核開発問題は、2002年後半の高濃縮ウラン計画により再び注目を集め、2003年1月に北朝鮮がNPT(核拡散防止条約)からの脱退を表明したことから緊迫の度を増すこととなった。そこで2003年4月には米中朝よる三カ国協議が北京で開催され、さらに六カ国協議へと発展し、第一回目が2003年8月、第二回目が2004年2月、第三回目が2004年6月、第四回目が2005年9月、第五回目が2005年11月に開催されたが、結局北朝鮮の核実験を阻止することはできなかった。北朝鮮の核実験は中国にとっても、面子をつぶされた事、北朝鮮問題で中国が頼りにならないことが国際社会で認識されたこと、中国自身にとっても北朝鮮の核が脅威になる可能性があるなどの点で好ましくない事態であった。
 だが2003年2月には、中国は北朝鮮へのエネルギー供給をストップするという強硬手段に出て北朝鮮を三者協議に出席させたという実績もある。中国は本来ならば北朝鮮の生命線を握るぐらいの絶大な影響力を持っているのだが、結局のところ中国も北朝鮮も六カ国協議を時間稼ぎのために用いているだけで、核問題も拉致問題も解決しようという気など毛頭ない。

■北朝鮮と経済関係を強化する中国
 日本政府、マスコミが北朝鮮に厳しい姿勢をとるようになったのと反比例するかのように、中国は北朝鮮との経済関係を強化している。2005年の中朝間の貿易総額は15億8024万ドル(約1844億円)で対前年比14%増、北朝鮮の貿易総額の過半数を占めている。2006年は北朝鮮のミサイル実験と核実験によって国際社会からひときわ厳しい非難を浴びたにもかかわらず、16億9800万ドル(約1982億円)で前年比7.5%の増加となっている。中国企業の対北朝鮮投資も2006年までに累積で1億3500万ドルに上っている。特に今中国では北朝鮮の鉱山開発に熱い視線が注がれている。中国のスーダン支援と同じ構図だ。いくら日本やアメリカが北朝鮮に制裁などの圧力を課したところで、中国が北朝鮮を手厚く支援するから結局金正日独裁政権は延命してしまう。これでは拉致問題も核問題も人権問題もいつまで経っても解決しないであろう。

■台湾問題を拉致問題との交換条件にする卑劣さ
 温家宝首相は4月の訪日時に、「台独反対」表明の見返り条件として、中国が日本の拉致問題解決を支持することを挙げたと言う。開いた口が塞がらないような恐るべき提案である。拉致問題解決の支持など世界のいかなる国でも無条件で応じてくれるはずだが、中国はわざわざ条件をつけてくる。日本にとっては国民の生命に関わる重要課題と引き換えに、中国の帝国主義拡大の野望と民主主義の抑圧に加担するよう要求してくるのである。拉致問題解決に中国は全く頼りにはできないことがおわかりいただけると思う。

■中国メディアの関心の薄さ
 中国メディア(中国メディアは全て官製である)の姿勢を見ても、北朝鮮による拉致、核、人権問題に対する極端な関心の薄さが見て取れる。今や北朝鮮のならず者ぶりはアジアや欧米広く知られている。ヨーロッパのマスコミは東アジアを中東に匹敵する不安定地域と評することもあるぐらいだ。
 だが一般の中国人民は北朝鮮の現状について、韓国よりも貧しいぐらいの認識しか持っていない。北朝鮮の慢性的な飢餓、身の毛もよだつような人権侵害、日本人や韓国人、その他世界中の人々が被害にあった拉致問題について全くといって知らされてない。中国人(マカオ)も一人拉致されているにも関わらずである。さすがに昨年9月に核実験をしたことは中国でも報道されたが、極めて消極的で無関心に近い反応であった。また、中朝関係にとって極めて重要な難民問題についても、東北地方に住む朝鮮族などの当事者はともかく、ほとんどの中国人民は難民の存在さえ知らない。

■中国に亡命した北朝鮮難民の実態
 1995年ごろから北朝鮮から中国に難民が脱出するようになり、98年頃にピークに達した。多数の難民が国境を越えて中国へ逃れる理由については今更説明するまでもあるまい。北朝鮮と接する吉林省延辺(ヨンピョン)朝鮮族自治州などの朝鮮族は、あまりにも無残な難民の姿を哀れに思い、彼らに衣食住を提供してきた。だがあまりにも数が増えすぎたために、朝鮮族だけで面倒を見るには限界に近づいてきた。
中国政府はあろうことか、彼らを捕まえて、本国に強制送還している。言うまでもなく、北朝鮮に送還されると過酷な拷問や強制労働が待ち構えている。国連の難民条約33条には、「難民を迫害の待つ国に送還してはならない」という規定がある。だが中国政府は「中朝間に難民問題は存在しない」、「経済難から国境を越えたごく少数の朝鮮の不法越境者がいる」という立場だ。
 北朝鮮難民は中国に脱出しても非常に弱い立場におかれる。運よく生活に余裕のある親族に保護されれば、北朝鮮にいたときには考えられなかった衣食住に満ち足りた生活も可能である。そうでない難民は、人身売買、強制労働、売春などに従事させられる。だがいかなるケースでも中国に潜伏し続ける限り公安に逮捕されて地獄へと強制送還される危険性がつきまとう。いずれは中国を脱出しなければならない。
脱出のパターンは東北地方からはるか南の広西チワン族自治区まで行き、国境を越えてベトナム→カンボジア→タイへと逃れてバンコクの韓国大使館で亡命申請をするといった気の遠くなるような回り道を余儀なくされる。
 なんとか中国に脱出しても、さらに第三国へ脱出できるのはほんの一握りである。現在中国国内には数万人から数十万人の北朝鮮難民が潜伏しているといわれているが、中国政府が見つけ次第即強制送還という残酷な措置をとる以上、正確な数字は誰にもわからない。

■中国共産党が続く限り何も解決しない。
 中国政府は表向き北朝鮮と友好関係を保ちながら、実際には北朝鮮の民衆にたいする過酷な人権侵害を助長しているのである。こうしてみると、人権侵害、飢餓、拉致、核開発などの北朝鮮にまつわる様々な諸問題に対し、中国政府は解決する意思などほとんどなく、中国にまで害が及ばない程度にほどほどのレベルで維持させようとしているかのようだ。私は拉致や核が中国共産党の仕業だとは言わない。だが中国共産党独裁政権が続く限り、北朝鮮の拉致問題や核問題も解決しないと確信しているし、金正日独裁政権も延命し続けるであろう。

 

 

 




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