人民日報が破廉恥な社説を発表

 中国共産党の機関紙である人民日報は国内外において知名度だけは抜群に高いものの、正確なのは日付だけと言われるほどでたらめな記事と時代遅れのプロパガンダで溢れていることでも有名だ。今や一般の中国人民にさえ人民日報はほとんど読まれていないものの、中国共産党の動向を知るために外国の学者やジャーナリストの間で好んで読まれているという有様である。
 インターネットの普及により、世界規模で情報が瞬時に伝わるようになった現在、中国共産党は極めて低水準で恥知らずなプロパガンダを瞬時のうちに世界に発信し続けている。4月12日に「中国の人権状況をいかに正しく評価するか」という社説を発表したので、以下全文を掲載しよう。

 

 

 一国の人権状況を正しく評価するには、全面的な、歴史をふまえた、発展的な視点で問題を考察すべきだ。人権状況の発展は歴史的なプロセスであり、歴史・社会・経済・文化などの制約を必然的に受けてしまう。各国の歴史的背景、社会制度、文化的伝統、経済の発展状況などには大きな差があるため、人権に対する各国の認識は必ずしも一致せず、人権の推進方法もそれぞれ異なることがある。ある国の人権状況を評価する時、その国の歴史や国情を無視してはならない。ましてや、他のモデルや国・地域の状況を、単純に当てはめてはならない。中国の人権状況は、中国の歴史・国情・発展情勢を結びつけて、客観的に評価しなければならない。

1949年以前の中国では、帝国主義、封建主義、官僚資本主義という3つの弊害によって、多数の人々が著しい侮辱と苦難を受けていた。アヘン戦争以降の100年間、中国の人民はずっと3つの弊害から脱却し、人権を勝ち取ることを目標に、先人の屍(しかばね)を乗り越え、流血や犠牲を払いながら、堅忍不抜の長い闘争を続けてきた。

中華人民共和国の成立以降は、人民が主人となり、中国の人権状況には根本からの変化が起きた。中国政府は中国の歴史と国情を踏まえ、常に人民の生存権と発展権の問題を、最優先の差し迫った任務と位置付け、解決に取り組んできた。50年余りにわたる努力により、中国の経済と社会には大きな変化が生じ、人民の衣食の問題はほぼ解決し、生活水準は大きく向上した。さらに経済と社会の発展によって、人民が憲法と法律に基づいて享受する公民権や参政権、経済・教育・文化・社会に関する権利も、一層拡充された。中国の人権状況はこれまでにない水準に向上した。

中国は発展途上国であり、歴史や経済発展レベルといった制約から、人権状況には改善が待たれる部分も多くある。例を挙げると、中国は現在もなお、2600万人余りの貧困人口を抱え、中国の人民が享受する公民権と参政権も改善すべきところがある。この意味では、人権の発展を引き続き促し、社会主義が求める「人権の十分な実現」という崇高な目標を達成することは、中国の政府と人民にとって、今も長期的かつ歴史的な任務だ。

つまり、中国の人権状況を客観的かつ公正にとらえると、以下の数点にまとめることができる。

▽中国の政府と人民は、人権を勝ち取り、守り、改善するために、長く苦しい努力の末、大きな歴史的成果を上げた。

▽歴史や経済発展水準などの理由により、中国の人権状況には理想的とはいえない部分もまだ残っている。今後も向上と改善が待たれる。

▽残された問題については、中国の政府と人民が、積極的な措置により解決に取り組んでいる。中国の人権状況の発展情勢は好ましいといえる。


 

 さて、これからいよいよこの破廉恥な社説について評論させていただくが、まず第一段落で述べていることは要するに、それぞれの国の歴史的背景、国情、文化、社会的背景によって人権の基準とは異なり、他国の人権の基準をむやみに当てはめてはならないということを述べており、この意見に対して基本的に異論は無い。その通りだと思う。第二段落で述べていることもまあいいとしよう。
 おかしくなるのは第三段落からである。
中華人民共和国の成立以降は、人民が主人となり、中国の人権状況には根本からの変化が起きた。
人民が主人とはどういう意味であろうか。建国当初も現在も中国共産党の一党独裁であり、あらゆる団体、組織、宗教は中共への忠誠が求められ、小学校から職場にまで中国共産党の政治教育を強制させられ、言論の自由は皆無であり、でたらめの歴史や物語を強制的に信じ込まされ、反体制的な言論を発すればすぐさま捉えられて拷問される状況で「人民が主人」とは笑わせる。中華人民共和国の主人は中国共産党であり、人民ではない。人民は中国共産党の奴隷である。
 「人民が憲法と法律に基づいて享受する公民権や参政権、経済・教育・文化・社会に関する権利も、一層拡充された。」参政権と聞いて不可解に感じる人も多いことであろう。確かに中国には18歳以上の男女に選挙権があることになっている。しかし中国で行われる選挙とは、候補者はほとんど全て共産党員であり、街頭演説もポスター掲示もビラ配りもテレビ演説も行われず、ただ選挙当日に学校や職場で投票用紙に記入するだけ。有権者は投票日に始めて候補者の名前は知るものの、顔も経歴も政策も人柄も全くわからず、複数いる候補者の中から適当な人物を選んで投票する。私は何人かの中国人に、どのような基準で選ぶのかを聞いたところ、皆一様に「よさそうな名前の人」と答えていた。名前以外の情報が全く無いのである。
 第四段落では、中国の人権状況にも改善すべきところがあることを認め、2600万人の貧困層を抱えていること、公民権や参政権に改善すべき部分があることを挙げているが、はっきり言って茶番である。貧困層を2600万人と述べているが、これは貧困層をどのように定義するかにもよるであろう。2005年10月に世界銀行のウルフォウィッツ総裁は、中国の貧困層を8600万人で世界第二位であると述べた。だが中国における貧困層の実態は、今ここではあまり重要な問題ではないと思う。仮に2600万人という数字が正しいとすると、それは中国の全人口の2%程度であり、中国政府はよくやっているということになる。
 中国における人権問題とはこんなものでは済まされるものではない。中国における死刑執行は全世界の9割を占め、政府に都合の悪い言論を次々と摘発し、30万人のインターネット警察を動員して24時間体制でインターネットを監視し、チベットや東トルキスタンで過酷な植民地支配を継続し、法輪功に対する過酷な弾圧で2850人を虐殺し、一人っ子政策の弊害で6000万人に登る黒孩子(戸籍の無い子供)を放置し、800発のミサイルを台湾に向けて恫喝し、北朝鮮からの難民を捕えて強制送還し、文革や天安門事件などの数々の虐殺行為に対して全く謝罪しないどころか、共産党を賛美する教育を延々と続けている。
 今ここに挙げたのは現在進行形の人権侵害であり、建国以来中国共産党が行ってきた人権蹂躙はあまりにも多すぎてここには書ききれないぐらいである。貧困層や公民権、参政権の問題を挙げるのは全くの茶番であり、中国ではもっともっと恐ろしい人権弾圧が今もあちらこちらで行われている。「人民が主人」などというのは独裁国家特有の自画自賛である。一般的に、民主主義、自由、人権が確立している国ほど、国民やマスメディアは政府を痛烈に批判する傾向があり、残虐で恐怖に満ちた独裁政治が行われている国ほど、人民やマスメディアは政府を賞賛する傾向がある。人民日報の社説は、中国がいまだに時代遅れの封建独裁政治が続き、人権が確立していないことを如実に物語っている。
 確かに70年代と比べれば中国の人権は改善されたかもしれない。だが、東欧諸国が概ね民主化を達成し、最近ではイスラム諸国にも民主化の兆しが見られる今、中華人民共和国は依然として世界最低レベルの人権蹂躙国家と断じて良い。特に20世紀末あたりから法輪巧迫害や死刑の激増、猛烈な環境破壊など、中国人民の人権状況はここ数年悪化しつつある。我々外国人は「内政干渉」などと遠慮してはならない。中国人民に自由と人権がないからこそ、我々外国人が中国共産党の人権弾圧を痛烈に批判しなければならないのである。

 
 

 





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