中国共産党結党85周年特別論説@  


自国の先進性と後進性を使い分ける中共のご都合主義
 

 

 どんな国であれ、よほどの小国でない限りは国家の威信というものにそれなりにはこだわるものであり、これは当然ながら我が国日本にも当てはまる。それぞれの国にはそれぞれの国のアピールポイントがあり、それは、国土面積だったり、長い歴史をかけて生み出された文化遺産だったり、雄大な自然遺産だったり、経済力だったり、ハイテク技術だったり、世界を魅了する芸術文化だったり、スポーツだったり、超高層ビルだったりする。
 最近では先進国よりも発展途上国のほうが何かと国家の威信にこだわる傾向が強い気がするが、中国共産党が支配する中華人民共和国ではひときわその傾向が強い。今や中国の省都クラスの都市はいずれも超高層ビルが並んでいる。特に沿海部の北京、上海、広州、シンセン、大連、青島、天津などの都市に行くと先進国に全くひけをとらないように感じられる(それでも街中をくまなく歩いて、さらに人と接してみたりするとこの国もまだまだだなと感じるのだが)。証拠となるデータを紹介しよう。世界の超高層ビルランキングベスト100の中に、日本のビルは3つしかないが、中国のビルは27、香港を除いても17もあるのだ(もちろん台湾は含まれていない)。中国を訪れた日本人は見た瞬間に「いやあ、日本と変わらないなあああ」という錯覚をもってしまう。
 高層ビルの数だけではない。中国は言わずと知れたスポーツ大国でその成果は上がる一方だ。2004年のアテネオリンピックでは金メダル獲得数でついにアメリカに次ぐ2位に躍り出た。ほかにも核兵器を所有したり、世界で3カ国目となる有人ロケットを打ち上げたり、オリンピック開催と万博開催を控えているなどとにもかくにも国家の威信拡大に邁進中である。中国の欲望はとどまるところを知らない。今中国が渇望しているものの一つにノーベル賞がある。私が中国滞在中にもテレビでノーベル賞の特集などが報じられていたが、中国政府はとにかくノーベル賞がほしくてほしくてたまらないらしい。だが残念ながら中華人民共和国国籍保有者での受賞者は今のところゼロである。とにかく中国は国を挙げてノーベル賞獲得に血眼になっているので、数年以内には悲願が実現するかもしれない。
 こうして中国共産党は28年に及ぶ改革解放の成果を世界にアピールし、中国共産党だからこそ今日の中国の繁栄があると主張している。
 しかし、現在の中華人民共和国には誰が見ても遅れている部分がある。民主政治である。中国では建国から約60年もの間自由選挙を一度も行っていない(厳密に言えば形式的な選挙は行われているが、その実態は日本の地方大学の誰も関心を持たない学生自治会の選挙よりもさらにお粗末で非民主的である)。中国共産党以外の民主党派と言われる政党が8つ存在するが、実態は中国共産党の衛星政党でしかない。言論の自由など存在しないし、最近はインターネット上の言論に対する検閲がますます強化されている有様である。
 それに対する中国共産党政権の言い分は次のようなものだ。中国はまだ民主政治を導入できるほどには成熟していない。まだ農村部では貧困に喘ぐ人民が多く、読み書きもできず、「民主」の2文字も理解できない人々がたくさんいる。民主政治を導入するよりもまず、人民の生活を改善していくことのほうが先決である。

 おいおいおいおいおいおいおいおい、中国共産党のおかげで中国は今日の繁栄を迎えたんじゃないの?人民は豊かで幸福になったんじゃないの?人民が主役になったんじゃないの?社会主義国家の人民は地位が高いんじゃないの?あれほどたくさんの高層ビルを建てたじゃないか、ロケットも打ち上げたじゃないか、核兵器も持ったじゃないか、オリンピックと万博も控えているじゃないか。中国は十分豊かで繁栄しているんじゃなかったの?????

 いまここでは、中国は本当に発展しているのか、それともまだまだ後進国の状態であるかについての客観的評価はどうでもいい。重要なことは中国共産党は都合に合わせて自国の発展振りをアピールしたり、後進ぶりをアピールしたりすることである。
 国際社会での重要な地位を築くため、中国は自国の発展振りを積極的にアピールする一方で、非民主的な部分を糾弾されると途端に自国の後進振りをアピールする。なんともご都合主義である。これは間違いなく中国共産党のいい訳である。中国の民主政治は、中国よりも貧しいはずのインドやカンボジアなどよりも遥かに遅れている。あれほどの「繁栄」を謳歌して入る国が民主政治に関しては世界最低レベルなのである。どう考えてもいびつだ。経済や社会が華やかになっていく一方で、政治の後進性によって矛盾を次々と拡大させていくことになる。
 要するに中国共産党は民主化などするつもりはない。民主化をしたら中国共産党が政権を維持できないと理解しているからだ。民主化をしないためには国内にある程度後進的要素、不安定要素があったほうがいい。であるからして地方の農民はいつまでもいつまでも貧しいまま取り残されている。しかし中国共産党は自国の発展振りもアピールしたいし、経済を発展させて国際社会で有利な立場に立ちたい。だから沿海部の都市は急速に発展する。発展途上国には地域間格差や所得格差の拡大はつきものであるものの、中国共産党の場合は根本的に先進的な部分と後進的な部分が拡大していないとやっていけない政権構造となっている。
 だがいつまでも騙し騙しやっていくわけにも行くまい。全人代では10年ほど前から農村の貧困対策が議論されるようになっていが、一向に成果を見せていない。農民の所得が向上し、教育水準が向上してしまうと全国民規模での民主化への圧力が強まってしまう。農民が豊かになるのは困る、だが貧しいままなのも困る。中共政権は深刻な矛盾を抱えている。
 結局のところ、中国共産党による独裁政治とは長期間維持するのが不可能なシステムになっている。中華人民共和国は経済発展を謳歌する一方で、実は路頭に迷ったまま、窒息死しようとしている。
 

 

 

 




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