中朝戦争勃発の予感?!?!

 緊張高まる朝鮮半島情勢について、日本人で知らないものはいないだろう。ニュースでは必ずと言っていいほど朝鮮半島情勢がトップ項目で扱われている。欧米諸国はすでに90年代から東アジア地域を世界で最も紛争勃発の可能性が高い危険地域と見なしていた。北朝鮮という世界最悪のならず者国家の存在のほか、中国は台湾を侵略すべく虎視眈々と狙っている。日本と中国・韓国の関係も、戦争勃発の可能性は低いが極めて不安定である。平和ボケした日本人には、我が国が世界で最も不安定な危険地帯に位置しているという自覚を持ってもらいたいものだ。
 北朝鮮のあまりものならず者ぶりに、アメリカは以前から我慢に我慢を重ねてきた。すでに90年代前半から北朝鮮への先制攻撃を計画していたことは公然の事実である。今のところ実現するかどうかは不透明であるが、十数年前から現在に至るまで、アメリカがその可能性を想定し続けていることは間違いない。
 クリントン政権からブッシュ政権へ交代すると、対中政策にはそれなりの変化が見られたが、対北朝鮮政策には格別大きな変化があったわけではない。ただブッシュ政権は対外的には対テロ戦争に膨大な国力を費やしてきたので東アジア情勢に深く関与する余裕は無かった。アメリカはそろそろ、イスラエル以外の中東諸国に対する関与は控えめにして、東アジアを重視すべきではないだろうか。東アジア諸国は中東諸国と違い、日本、韓国、台湾、香港、モンゴルなどの民主主義国家が多く、アメリカとある程度価値観を共有できる。もうひとつ中東諸国と違うのは、東アジア諸国は全て世俗的国家であり、この点でもアメリカと共通している。世界最悪のならず者国家北朝鮮が核実験強行に踏み切った今、アメリカの東アジアへの関与は確実に強まっていくことであろう。
 北朝鮮の核実験にはそれなりの思惑と計算があるのだろう。インド、パキスタンは核実験実施直後は経済制裁を喰らったが、結果的には国際的地位を高めるに至った。北朝鮮も核保有によって世界に認めてもらえると考えているのかもしれない。だが国際社会は絶対に北朝鮮の核保有を認めるべきではない。インド、パキスタンは曲がりなりにも民主主義を取り入れた国家である。核兵器を保有している8カ国と北朝鮮とではあまりにも事情が異なっている。核実験によって、北朝鮮が損害を被り、後悔させるような結果をもたらすべきなのだ。
 北朝鮮の核実験については中国も平常心ではいられない。諸外国と同様、中国も北の核実験には厳しい態度を示している。中国と北朝鮮は朝鮮戦争時の同盟国であるが、そんなことに何の意味があろうか。かつての敵国である日本とアメリカは、終戦からわずか6年で同盟国になった。中国は友好国だったソ連と敵対したこともある。半世紀前の国際関係など意味がない。当時の指導者層はほとんど死に絶えている。現在の中朝関係は、半世紀前の中朝両国の状況を基準に考えるべきである。
 中国から見れば、北朝鮮はそれなりに都合のいい存在である。言うまでも無く、中華人民共和国は詳しく述べていたら膨大な文章が書けるぐらいのならず者国家である。とはいっても、国際社会から見れば、諸外国と経済的に深く結びついた中国と比べて、孤立した北朝鮮はよりならず者国家に映る。北朝鮮があまりにもひどいので、中国は何だか普通の国家に見えてしまい、そのならず者振りが目立たなくなってしまう。何とも都合のいい存在だ。中国が国際社会でそれなりに受け入れられる存在となったのも、北朝鮮のおかげと言っていいかもしれない。また、韓国に米軍基地がある現状では、中国にとって北朝鮮は重要な緩衝地帯である。米軍基地を抱える国と国境を接することは何としても避けたい。当然ながら中国は南北統一など望んでいない。 
 とはいっても、物事には限度というものがある。北朝鮮のならず者度が限度を超えると中国にとって逆に都合が悪くなってしまうのだ。この数年、中国は国際社会から北朝鮮の暴動を食い止めるべく、その影響力を期待されている(私自身はあまり期待していないのだが)。何はともあれ、中華人民共和国は国連安保理の常任理事国なのだ(私自身は中華人民共和国のようなならず者国家が国連安保理の常任理事国の座に居座っていることを非常に理不尽と感じている)。常任理事国であれば当然ながら責任と義務が伴う。しかし結局中国は北の暴走を食い止めることはできなかった。よくメディアでも指摘されているが中国は完全に面子を潰されてしまったのだ。面子のほかに、北朝鮮が極端に暴走すると、アメリカの東アジアへの関与が強まってくる。これも中国としては極力避けたい事態である。
 中国社会は表向き平静さを保っているように見える。確かにほとんどの中国人民はさほど気にしていないかもしれない。だが中国政府は気が気でないはずだ。胡錦濤が二度に渡って特使を派遣したのは承知の通りだが、実際にどのような会話がなされたかは不明である。そもそも中国と北朝鮮は表向き友好的だが、90年代前半以降、実際にはそれほど関係は良好でないことはファン・ジャンヨプ氏の証言からも明らかだ。私は中国滞在中に、テレビ局での勤務経験がある中国人男性から聞いた話では「北朝鮮がミサイルを発射した場合、まず標的となるのはソウル、その次は北京だ」そうだ。彼の発言が正しいかどうかはともかく、中朝両国の関係は決して同盟国といえるほど強固でなさそうだ。
 一般的に中国メディアでは北朝鮮に関する情報は乏しい。最近の日本では毎日のようにニュースで北朝鮮が取り上げられるが、中国人の大部分は拉致問題も大規模なマスゲームも金正日の暴虐独裁ぶりも、東北地方に多数の脱北者が潜んでいることも知らない。せいぜい韓国よりも貧しいぐらいの認識しかない。とはいっても中国が北朝鮮に関する膨大な情報を持っていることは間違いない。そもそも国交があり、首脳会談も度々行われ、直行便も就航し、貿易や投資も盛んで、脱北者が度々公安に捕まっている。北朝鮮に関する情報収集は日本より遥かに容易である。得た情報をどの程度公表し、どのように活用するかは日本と中国とで大きく異なっているが、情報量という点では日本は到底中国に及ばないであろう。北の軍事力、ミサイル発射の可能性、北の仮想敵などなど、中国政府は綿密な情報収集と分析を積み上げている。
 中国にとって考えられる最悪のシナリオは二つある。まずは北朝鮮が先制攻撃をしかけて中国に核ミサイルを発射し、中国側に数万、数十万単位の死者が出ること。この可能性はほとんどないと見るのが普通の見方であろうが、問題はそう単純ではない。これについてはもう一つの最悪のシナリオと絡めて考える必要がある。
 もう一つの最悪のシナリオはアメリカが先制攻撃を仕掛け、(もしくは北朝鮮が韓国や日本に侵攻し、それに反撃する形でアメリカが北を攻撃して)、アメリカが北を占領下においてしまうことだ。そうすると直接米軍と(統一実現後は米軍基地を有する国と)国境を接することになる。これは将来的な台湾侵略計画にあたって巨大な目の上のたんこぶとなる。中国が国連の経済制裁決議を控えめなものにするようこだわったのも、北を弁護したいのではなく、アメリカの介入を抑えたいからだ。
 本来ならば北朝鮮には適度なならず者国家のままでいてもらって、アメリカは東アジアに関与せずに中東情勢の泥沼にはまって苦労を重ね、その間に中国は着々と軍備を増強して台湾、尖閣諸島、南沙諸島の侵略に備えるのが最高のシナリオであった。だが事態は逆に向っている。何としても北の2度目の核実験は阻止したいが、北はなかなか中国の思い通りには動かない。そもそも北朝鮮から見た場合、アメリカや日本と同じぐらい中国というのは邪魔な存在だ。北は金日成の時代から核保有を渇望してきたが、それに圧力を掛け続けてきたのがほかならぬ中国なのだ。一般的に核兵器を持つと、パワーバランスが崩れる。通常戦力では大きな差があっても核兵器を保有したとたんに同等程度の軍事力になったりする。だから中国は北の核保有に賛成できないし、北は核を保有したい。核保有によって中国ともアメリカとも対等に渡り合える、逆に中国やアメリカを恫喝することだってできる。テポドンの射程範囲には中国も大部分含まれていることを忘れてはならない。
 アメリカが更なる強硬姿勢を示し、武力行使をほのめかし、実際に朝鮮半島周辺の軍備を増強し、攻撃の一歩手前まで進んだとき、中国はどうするであろうか。中国としては北に先制攻撃をしかける可能性が十分にあり得る。朝鮮半島全域がアメリカの影響下に入るぐらいであれば、中国自らの軍事侵攻を選ぶだろう。北朝鮮を守るためではなく、中国共産党政権自身を守るためである。その場合、韓国では同胞を侵略した中国への猛反発が起こるであろうが、日米は表向き抗議はするが、本気で対中制裁発動などの強硬手段をとるとは考えにくい。この世からならず者国家が一つ消えてくれれば民主主義国家にとっては好都合である。しかも中国側の人的、経済的損失も無視できない。中華人民共和国自身も大きな国力低下を招き、東アジア情勢のさらなる流動化を招くであろう事は想像に難くない。

 


 




100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!