堕落してゆく中国人大学生

日本では大学のレジャーランド化が問題となって久しくなっている。授業は適当にさぼって、出席してもろくに講義を聞かず、期末試験の直前だけみんなからノートや過去問をかき集めて準備して単位をとる。学業よりもアルバイトや恋愛に精を出し、社会人になるための技能などろくに学ばすに卒業する。近年ゆとり教育が疑問視されたが、何と言っても大学におけるゆとり教育を何とかしなければ解決の糸口は見えないだろう。2007年をピークに、大学全入時代を迎えようとしている今、日本の高等教育は正念場に差し掛かっているといえるかもしれない。
 それに比べれば中国の大学生は日本以上に厳しい受験競争を勝ち抜き、入学してからも学生同志は厳しい競争意識に燃え、毎日のように試験やレポートに追い回され、アルバイトもほとんどせず、恋愛なんか時間の無駄、毎日朝から晩まで学業に明け暮れている…などというイメージがかつてはあったが、もはや時代は変わり、上に述べたような状況は過去のものとなりつつある。
 かつては大学生でアルバイトをする人はごくまれで、せいぜい家庭教師をするぐらいであったが、最近は大学内の事務や、デパートで販売のアルバイトをする学生が増えている。まだまだ日本のようにアルバイトがシステムとして確立しているわけではないし、時給も恐ろしく安いが…
 かつて大学生で恋愛をする人は少数派であったし、恋人を作ってもまじめに、それこそ一度恋愛したらそのまま結婚するなどという雰囲気が以前はあったが、これは完全に過去のものとなった。中国の大学生もあたりまえのように恋愛をし、時間が経てばわかれていく。
 アルバイトや恋愛についてはさほど深刻な問題とも言えないだろう。だがほかにも大学生を堕落させる様々な要素がある。近年、若者の間ではテレビゲームやネットゲームが大流行している。これにはいくつかの要素があるだろう。まず、大学の周辺にはネット・カフェが多数乱立していること。中国ではゲーム用ソフトはほとんどニセモノなので信じられないような格安な値段で売られていること(8種類のゲームが一枚のCDに入って5元=63円など)。学生たちの多くは大学内の寮で共同生活をしていること。こういった恵まれた(?)条件が重なって特に男の子たちは朝から晩まで寝食を忘れてゲームに熱中し、挙句の果てに授業もさぼり、宿題さえもやらない始末である。今や中国全土で若者のゲーム中毒が深刻な社会問題となっており、天津では中二の学生が成績が悪化してもゲームがやめられず、「自分を制御できない、もう何の役にも立たない」と泣いて訴え、ついには飛び降り自殺してしまった。
 中国でも大学進学率が徐々に上昇し、以前のような狭き門ではなくなっているのに加え、近年どの大学も成人教育を受け入れるようになった。成人教育とは本科生(普通の大学生)と違い、全国統一試験を受ける必要がなく、入学試験を一切受けずに書類提出だけで入学できるようになっている。日本の専門学校生と変わらない。成人教育と言っても年齢的には大半が本科生と変わらない。ようするに大学の本科に合格する実力がない若者が入るところである。
 しかも一般的に成人教育とは、単に大学側の金儲けの手段に過ぎず、信じられないような募集の仕方をしている。成人教育は通常、一年生を募集した後、二年後に再度三年生からの編入を受け付けるのだが、その分野の専門知識が全くない人でも三年生から平気で入学させる。ひらがなもまともに読めない人が日本語学科の三年生に入ったり、経済を全くかじったことない人が経済学科の三年生になったりする。
 入学後のシステムも極めていい加減で適当だ。無試験で入学できると言うことは勉強を全くする気がない人でも入れるという意味であり、入学しても授業に全く出席せずに期末試験だけ参加する学生が非常に多い。期末試験で悪い点数をとっても追試を受けさせて大半は合格させてしまう。その追試の方法も、前日になって「明日追試を行う」という連絡を出して、一日で5,6科目の試験を行い、大半を合格させてしまうといういい加減さだ。
 当然ながら退学も多い。成人教育ではだいたい二年間で半分が退学し、再度編入を募集した後、四年生終了時にはまた半分が退学するのが平均的な状況である。結局一年生から残るのは四分の一程度となる。
 日本の大学教育ももちろん深刻な状況にあることは間違いない。しかし中国の大学教育はもっと深刻であり、今後も深刻さを増しつつある。日本の大学生のほとんどは4年間で様々な業種のアルバイトを経験し、社会に出るうえでの一般常識や、労働の大変さを経験している。中国の大学生はアルバイトをしても責任も負担も給料も軽いものが多く、ほとんど社会勉強になっていない。ほかにも日本の大学生は遊んでばかりいるとは言っても、車を運転したり、海外旅行に出かけたり、パーティーを企画したりと様々な経験を積んでから社会に出るのに対し、学校の寮や周辺のネットカフェに閉じこもってゲームに熱中している中国の大学生が果たして何の戦力になろうか。
 ただでさえ雇用状況が悪化しているのに、さらに大学は大量の役立たずの人材を送り出すので、就職難は日本が天国に思えるほど厳しい。現在、中国の大学生の就職率は73%程度、これも水増しされた統計で実際にはもっと低いと言われている。日本ではフリーターの増加に加え、ニートの増加が社会問題となっているが、中国でもニートが急上昇中だ。卒業と同時に失業者となったものの、就業する意欲がなく閉じこもって相変わらずゲームに熱中する若者が後を絶たないのだ。
 このような深刻な状況に陥った一つの背景としてはやはり一人っ子政策による弊害が挙げられるだろう。都会で育った25歳以下の若者はほとんどが一人っ子であり、生まれたときから良心と双方の祖父母から手厚く保護されて育っている。おもちゃを買ってもらっては数日で飽きてまた次のおもちゃを買ってもらい、家事も片付けも全くせず、自分の思いどおりにいかないとすぐにヒステリーを起こす。一人っ子世代がすでに成人した今、二十代の失業と離婚が激増中である。
 こうして中国社会は日々1日蝕まれていく

 

 

 

 




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