民主主義ランキングで中国より低い国が29カ国もあるのはなぜか


 今年の11月、イギリスの調査機関が世界167カ国の民主主義ランキングを発表した。選挙過程と多元性(Electoral process)、政府の機能(Functioning of government)、政治参加(Political participation、政治文化Political culture、市民的自由度(Civil liberties)の5項目でそれぞれ10点満点で採点し、その平均点がトータルスコアとなっている。
 堂々の1位に輝いたのは9.88ポイントのスウェーデン。以下、アイスランド、オランダ、ノルウェー、デンマーク、フィンランドと続く。この手のランキングでは北欧諸国がいつも上位を独占している。7位以下もルクセンブルグ、オーストラリア、カナダ、スイスなどの西洋諸国が続く。
 我が日本は8.15ポイントの20位で、アジア諸国で唯一成熟した民主主義(Full democracies)に分類された。報道の自由度で51位だったのと比べると健闘していると言えよう。日本の場合、選挙過程、市民的自由度では高い評価を受けているが、政治参加での評価が低い。そりゃあ、日本人の多くは1年に1回あるかないかの選挙のときぐらいしか政治に参加する機会はない。あとは個人レベルでは数年に一度遭遇するかしないかの世論調査ぐらいか。ただし近年はネットの普及により、気軽に世論調査に参加する機会も増えたものだが。それ以外だと市民集会やデモ、署名活動などが考えられるが、残念ながら日本人の多くはこういった活動に関心を示さない。それだけ日本社会が安定しているからといえなくもないが、人生ばら色などと感じている日本人はほとんどいまい。国民一人一人が国家、社会を良くしていこうという意識を持つことが必要だ。
 8ポイント以上の成熟した民主主義(Full democracies)にランクインしたのは28カ国。ほとんどが西洋諸国だが、モーリシャスとコスタリカが25位に入っている。両国は報道の自由度でも32位、29位と日本より上位にランクされている。
 日本以外のアジア諸国では韓国が31位、台湾が32位、インドが35位モンゴルが56位スリランカが57位、フィリピンが63位、インドネシアが65位、東ティモールが65、バングラデシュが75位、香港が78位、マレーシアが81位ランクインしている。
 さて、気になる中国だが、167か国中138位にランクしている。一瞬私は目を疑った。なぜそんなに順位が高いのか?中国よりも順位が低い国がなんと29カ国もあるのだ。だが5項目の点数を見て少し納得が言った。このランキングはかなり総合的に民主主義というものを採点しているのだ。中国の点数を詳しく見ていこう。
 選挙過程と多元性0、政府の機能4.64、政治参加2.78、政治文化6.25、市民的自由度1.18
 まず目立つのは政治文化が6.25と比較的高い点数がつけられていることである。残念ながらこの原因がわからない。国連安保理の常任理事国に入っていることや、国際社会での地位向上に積極的なことに高い点数がつけられているのかもしれない。政府の機能が4.64となっており、高いとはいえないが、それほど低いともいえない。これは確かにこんな程度と言えるのだろう。少なくとも都市部では高層ビルが林立し、高速道路総延長は今や世界第二位、鉄道などのインフラ設備、大規模な観光開発や工場建設、世界第三位の貿易総額や、世界一の外貨準備高などを見れば、中国政府の経済開発能力はアフリカ諸国や南アジア諸国よりも優秀である。ただし、依然として農村部の発展の遅れは世界最貧国並みで、電気も開通せず、小学校にも行けない世帯が珍しくない。そういうことを総合的に評価すれば政府の機能は4.64ぐらいが妥当であろう。
 政治参加は2.78。低い数字ではあるが、世界最悪レベルとは言えない。実は、中国では共産党独裁国家特有の政治参加手段があるにはある。共産党員の数は公称7000万人で全人口の5%、党員でなくともほとんどの若者は共産党青年団に所属しているし、その他の関連組織も含めれば数億人の中国人が共産党関連組織に所属している。もちろんほとんどの中国人民は自発的に率先して参加するのではなく、半強制的、もしくは単に出世のために有利だからと言う理由で参加するのであって、到底政治参加の項目で高得点がつけられるようなものではなかろう。
 選挙過程では見事に0点がつけられている。今時ろくに選挙をやらない国というのも珍しい。独裁国家でも形式的には選挙というを行っている。フセイン時代のイラクには7年に一度大統領の信任投票が行われていたし、国王専制が続くサウジでも地方選挙が行われているし、ベトナムでも共産党に所属しない独立候補の立候補が認められているし、旧ソ連時代の独裁色を受け継ぐカザフスタンやトルクメニスタンでも大統領選挙や信任投票が行われている。中国でも一応全人代の選挙みたいなものはある。だがそのお粗末振りは日本の中学校で行われる生徒会選挙よりもひどいもので、名簿に3人ほどの名前があって、出身も経歴も政策も主張も顔も声もまったくわからずにだれか一人を選ぶのである。もちろん投票以前に候補者の主張をテレビ、ラジオ、雑誌、街頭などで知る機会は全くない。これで18歳以上の男女に選挙権があるなどとほざいているのだから笑止千万だ。
 市民的自由度も相当低い。それはそうだろう。反体制的な活動をすれば命を落とすか、身体障害者か精神障害者にさせられる可能性が極めて高い。都市再開発反対や環境運動や宗教活動でさえも危険が及ぶぐらいだ。報道や出版の自由が世界最悪レベルであることは言うまでもない。インターネットでさえも厳重な監視下に置かれ、掲示板で反体制的な書き込みを行えば即刻削除、最悪の場合逮捕される。
 選挙過程と多元性の項目ではチュニジア、カタール、オマーン、アラブ首長国連邦、シリア、エリトリア、ラオス、赤道ギニア、サウジアラビア、リビア、トルクメニスタン、ミャンマー、トーゴ、チャドと並んで最下位、市民的自由度ではウズベキスタン、トルクメニスタン、ミャンマー、北朝鮮よりかは上回っているが、タジキスタンとラオスと並んでワースト5位である。
 結局のところ、中国は自由度という意味では世界最悪レベルであることがよくわかる。それから注意しておきたい点として、今回発表されたランキングでは、政権による民衆に対する弾圧や残虐行為の激しさがどこまで考慮されているか疑問である。トルクメニスタンやミャンマーのマスコミ報道は確かに中国よりも硬直的で閉鎖的で時代錯誤的に思える。これらの国で人権侵害はあるにしても、反体制的な人間に対し、生体臓器摘出や、体中をアイロンで焼き付けたり、生殖器に凶器を差し込むなどの残虐行為が行われているだろうか。中国共産党のようなヒットラーもびっくりの残虐行為を行う殺人組織が国を支配し、なおかつ自由度の低さは世界ワースト1位ではなくとも最悪レベルとくれば、そこに暮らす住民たちの悲惨さは想像を絶するものがある。
 私は中国で3年生活したぐらいだから、もちろん現実からかけ離れた極端なことを言うつもりはない。中国共産党による残虐行為に苦しめられている人は中国人の中でもごく一部である。だが迫害されている法輪功学習者、民主活動家、地下キリスト教信者、チベット人、ウイグル人などは、決して犯罪行為によって罰せられているのではなく、普通の国であれば何ら法に触れない生活を営むことによって中国共産党によって拉致され、拷問されていることを忘れてはならない。


1 スウェーデン 9.88
2 アイスランド 9.71
3 オランダ 9.66
4 ノルウェー 9.55
5 デンマーク 9.52
6 フィンランド 9.25
7 ルクセンブルグ 9.10
8 オーストラリア 9.09
9 カナダ  9.07
10 スイス 9.02
11 アイルランド 9.01
11 ニュージーランド 9.01
13 ドイツ 8.82
14 オーストリア 8.69
15 マルタ 8.39
16 スペイン 8.34
17 アメリカ 8.22
18 チェコ 8.17
19 ポルトガル 8.16
20 ベルギー 8.15
20 日本 8.15
22 ギリシャ 8.13
23 イギリス 8.08
24 フランス 8.07
25 モーリシャス 8.04
25 コスタリカ 8.04
27 スロベニア 7.96
27 ウルグアイ 7.96


29 南アフリカ 7.91
30 チリ 7.89
31 韓国 7.88
32 台湾 7.82
33 エストニア 7.74
34 イタリア 7.73
35 インド 7.68
36 ボツワナ 7.60
36 キプロス 7.60
38 ハンガリー 7.53
39 カーポベルデ 7.43
39 リトアニア 7.43
41 スロベニア 7.40
42 ブラジル 7.38
43 ラトビア 7.37
44 パナマ 7.35
45 ジャマイカ 7.34
46 ポーランド
47 イスラエル 7.28
48 トリニダード・ドバゴ 7.18
49 ブルガリア 7.10
50 ルーマニア 7.06
51 クロアチア 7.04
52 ウクライナ 6.94
53 メキシコ 6.67
54 アルゼンチン 6.63
55 セルビア 6.62
56 モンゴル 6.60
57 スリランカ 6.58
58 モンテネグロ 6.57
59 ナミビアNamibia 6.54
59 パプア・ニューギニア 6.54
61 スリナム 6.52
62 モルドバ 6.50
63 レソト 6.48
63 フィリピン 6.48
65 インドネシア 6.41
66 東ティモール 6.41
67 コロンビア 6.40
68 マケドニア 6.33
69 ホンデュラス 6.25
70 エルサルバドル 6.22
71 パラグアイ 6.16
72 ベニン 6.16
73 ギニア 6.15
74 ドミニカ共和国 6.13
75 バングラデシュ 75= 6.11
76 ペルー 6.11
77 グアテマラ 6.07
78 香港 6.03
79 パレスチナ 6.01
80 マリ 5.99
81 マレーシア 5.98
82 ボリビア 5.98


83 アルバニア 5.91
84 シンガポール 5.89
85 マダガスカル 5.82
86 レバノン 5.82
87 ボスニア・ヘルツェゴビナ 5.78
88 トルコ 5.70
89 ニカラグア 5.68
90 タイ 5.67
91 フィジー 5.66
92 エクアドル 5.64
93 ベネズエラ 5.42
94 セネガル 5.37
95 ガーナ 5.35
96 モザンビーク 5.28
97 ザンビア 5.25
98 リベリア 5.22
99 タンザニア 5.18
100 ウガンダ 5.14
101 ケニア 5.08
102 ロシア 5.02
103 マラウィ 4.97
104 グルジア 4.90
105 カンボジア 4.77
106 エチオピア 4.72
107 ブルンジ 4.51
108 ガンビア 4.39
109 ハイチ 4.19
110 アルメニア 4.15
111 キルギス 4.08
112 イラク 4.01

113 パキスタン 3.92
113 ヨルダン 3.92
115 コモロ 3.90
115 モロッコ 3.90
115 エジプト 3.90
118 ルワンダ 3.82
119 ブルキナ・ファソ 3.72
120 カザフスタン 3.62
121 シェラレオネ 3.57
122 ニジェール 3.54
123 バーレーン 3.53
124 キューバ 3.52
124 ナイジェリア 3.52
126 ネパール 3.42
127 コート・ジボワール 3.38
128 ベラルーシ 3.34
129 アゼルバイジャン 3.31
130 カメルーン 3.27
131 コンゴ 3.19
132 アルジェリア 3.17
133 モーリタニア 3.12
134 クウェート 3.09
135 アフガニスタン 3.06
135 チュニジア 3.06
137 イエメン 2.98
138 中国 2.97
139 スワジランド 2.93
139 イラン 2.93
141 スーダン 2.90
142 カタール 2.78
143 オマーン 2.77
144 コンゴ民主共和国 2.76
145 ベトナム 2.75
146 ガボン 2.72
147 ブータン 2.62
147 ジンバブエ 2.62
149 タジキスタン 2.45
150 アラブ首長国連邦 2.42
151 アンゴラ 2.41
152 ジブチ 2.37
153 シリア 2.36
154 エリトリア 2.31
155 ラオス 2.10
156 赤道ギニア 2.09
157 ギニア 2.02
158 ギニアビサウ 2.00
159 サウジアラビア 1.92
160 ウズベキスタン 1.85
161 リビア 1.84
162 トルクメニスタン 1.83
163 ミャンマー 1.77
164 トーゴ 1.75
165 チャド 1.65
166 中央アフリカ 1.61
167 北朝鮮 1.03

 

 

 




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