黄文雄氏講演会リポート

 

 2005年8月6日、神奈川国民会議が主催する黄文雄氏の講演会が開催された。場所は横浜開港記念会館。この建物は1917年に開港記念横浜会館として建立。1989年に国指定重要文化財となった由緒ある建物である。JR根岸線関内駅から徒歩数分の距離のある同会館の周辺にはほかにも神奈川県立博物館が国指定重要文化財となっており、さらに横浜市指定歴史的建造物も数箇所ある。現在横浜ではみなとみらい地区が経済の中心地となっているが、特に戦前はこの関内地区が政治、経済、文化の中心であったことは想像に難くない。
建造物の話はこれくらいにして、まず午後2時から神奈川国民会議の総会が開かれ、その後2時45分頃から黄文雄氏の講演が始まった。タイトルは「中国との危険な『友好』に終止符を」。以下は講演内容の要約である。


 日本の中国専門家はざっと数千人はいると言われているけれども、かつて林彪事件を誰一人として予測できなかったように、その水準には問題がある。そもそも日本では江戸時代から当時の朱子学者は中国を美化する傾向がある。黄文雄氏が来日した1959年ごろの日本でも中国は蚊も蝿も鼠もいない地上の楽園などと宣伝されていた。
日本ではどうも中国を現実とはさかさまに見る傾向があるようだ。中国について正しく理解するためには、表面的に言われていることと逆の見方をしたほうがいい。特に中国の歴史認識については、南京大虐殺にしろ、七三一細菌部隊にしろ、中国が述べていることと正反対の解釈をすればだいたい事実に近くなると言う。中国は常に事実とは正反対のことを述べ、いわゆる反日教育によって人民を洗脳している。
 89年の天安門事件や91年のソ連崩壊により息詰まった中国共産党政権は反日政策を強化することによって延命を図ることになった。日本人はどうも日本は古代より中国から多くの文化を学んだので中国に対して特別な眼差しで見てしまう。代表的なのは使節を多数送った唐の時代であろうが、実際には唐は日本に何らかの文化を伝えるために日本から多額の金品をかすめとっているという。実は日本が唐から沢山の文化を学んだと言うのは中国からぼったくられたと考えればいいらしい。むしろ19世紀末から20世紀初頭にかけて、沢山の中国人留学生が日本で近代的な思想や経済制度や科学技術などを学び、さらに沢山の日本人が中国に渡って様々な文化や先端技術を教えている。中国のほうが日本に対して感謝すべきなのだ。
 その挙句の果てが現在の強烈な反日教育である。実際のところ、反日教育の材料となる日中戦争と言うのはいかなるものだったのだろうか。よく日中15年戦争などと言われるが、これは完全に言葉のゲームである。満州事変はほぼ一日で終わっているし、日中戦争は盧溝橋事件から武漢陥落まで1年4ヶ月ほどでほぼ決着がついている。しかもこの日中戦争の時期であっても中国では現在のような全土で反日の嵐が吹き荒れていたわけでは決してない。武漢陥落後は主に蒋介石軍と毛沢東軍と王精衛軍との戦いであり、日中戦争とは中国内戦の延長として見るべきである。中華民国時代、実際にはそのような名前の一つの国家が存在したわけではなく、中華民国時代に戦争のない時代などなかった。例えば四川省では15年間で500回もの内戦が起きている。しかも当時の中国内戦とは国民党対共産党などだけではなく、国民党内や共産党内でもそれぞれ分裂して戦争になる有様である。むしろ日本軍の強い影響下にあった南京政府や満州国のほうがはるかに安定した。中国はやはり日本に感謝すべきである。
 中華人民共和国建国後、反日政策はあるにはあったのだろうが、それほど力を入れていなかった。あまり日本という存在は重視されていなかったようである。しかし文革が終了し、改革解放時代になって、日本が中国よりもはるかに進んだ文明国であることに中国人の多くが気づかされたのである。
近年中国が反日政策を強化するようになった原因は一言で言えば、中国国内で抱えている問題があまりにも膨大で多岐にわたるからである。
 表面的に見れば好調な中国経済であるが、経済基盤はかなりもろい。外資による対外依存率は70%以上にのぼるし、毎年500億ドルの外資が中国に投入される一方で、ほぼ同じ金額の中国資本が外国へ脱走している。中国は独自の技術開発にほとんど力を入れておらず、もっぱらスパイ行為によって外国の技術を盗むことに勢力を注いでいる。そもそも中国の発展は日本の技術なしには、というより中国の経済発展そのものが日本との関係なしにはなりたたないと言っていい。中国が資源大国であると言うのは全くの幻想で、今や中国は世界一の石油輸入国に転落している。1980年以降国連から受けている3500万人分の食糧支援は2006年でストップとなり、2007年には日本からの援助もストップ。中国は人口の7割が農民で占められているにもかかわらず食料が足りないと言う。中国の農業は常識では考えられないほど競争力が弱いのだ。中国の農業人口は8億6千万人、それに対しアメリカの農業人口は500万人程度で中国の百分の一以下である。しかしアメリカの可耕地面積は中国の1.3倍である。また、農村の余剰労働力の問題も絶望的な水準にたしており、今や中国は数億単位の失業者で溢れかえっているのだ。
 汚職も極めて深刻だ。人口の1%が国富の半分を独占し、GDPの25%が賄賂などの不正収入と言われている。中国政府が汚職をまともに取り締まらないのもこの辺に原因がある。GDPの25%に及ぶ汚職を取り締まろうとしたらもはや国家経済の崩壊である。汚職によって社会が蝕まれていくと同時に、汚職を取り締まっても経済が崩壊に向うと言う深刻なジレンマに陥っているのだ。


 こうして、黄文雄氏は経済、資源、農業、失業問題、汚職など様々な視点から中国がかかえる深刻な問題を多数紹介していた。どれ一つとっても極めて絶望的な状態であり、いったいこの国の崩壊も時間の問題のような気がしてならない。実は私にとっては8割ぐらいはすでに知っているような内容なのだが、黄文雄氏の精力的な活動によって一人でも多くの日本人が中国に対する幻想から目覚めてほしいものである。時刻は4時15分ほどになり、私は夕方から東京都文京区で開催される「台湾研究フォーラム」に参加する予定なので残念ながら黄文雄氏の講演を途中で抜け出すこととなった。
 黄文雄氏は膨大な著書を出しており、世間一般でも知名度は高いはずだ。できればテレビなどに出演してもっと多くの日本人を覚醒してほしい。

 

 

 

 




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