チベットの地方区分

 

チベット=チベット自治区だと誤認している人が多い。例えばこちらの世界の国家を紹介するページではチベットと中国が別々の国として扱っていることは評価できるが、チベット自治区に相当する部分がチベットとされている。実際にチベットは面積も人口もチベット自治区の倍近くある。

とはいえ、一体全体どこからどこまでがチベットであるのかわかりにくくなっているという事情もある。これは歴史的に見てチベットが必ずしもまとまりのある国家ではなかったという複雑な要因もあるが、第二次世界大戦後にこの国を侵略した中国共産党の巧妙な植民地統治も影響している。ではチベットの範囲をどのように定義すればいいのであろうか。

現在の東アジア情勢の現実をも考慮した上で、チベットの範囲を考えるとき、以下の4段階で考える必要がある。

@チベット自治区

A自治区以外の中国共産党に支配されているチベット人居住地域

B中国共産党支配地域以外のチベット人居住地域

Cチベット人居住地域ではないチベット文化圏

 

@については特に説明は要らないと思うが、Aとは青海省全域、四川省のアバ州とガンゼ州、甘粛省のケンロ州、雲南省のデチェン州があてはまる。Bはブータン王国全域とインドやネパールの一部分があてはまる。Cについてはインド、ネパールの一部分のほかにモンゴルなども含まれる。当サイトでチベットと言った場合、原則として@とAを合わせた地域をチベットとする。Bについては当サイトではチベットの一部分としては扱わないが、チベット人居住地域として当サイトでもいつかは紹介したいと思う。チベット人が住んでいるからといってそこがチベットであるということにはならない。国境と民族の分布は一致しないことが多い。タイ南部四県はマレー人が多数派であるが、そこはマレーシアではなくタイである。ペナン島では人口の71%が華人であるが、そこは中国ではなくマレーシアである。

 

とりあえずチベットの範囲を理解するには実際に地図を見るのが手っ取り早いので、以下に掲載しよう。

 

上記の地図で茶色い線で囲まれている地域がチベットである。チベットは大きくウ。ツァン、カム、アムドの三地域に分けられる。

ウ・ツァン地方が現在のチベット自治区、アムド地方が青海省に相当する。カム地方は四川省のアバ州とガンゼ集、雲南省のデチェン州などが相当する。各地方にはそれぞれの方言や文化の特徴があるし、歴史的な中国との関わり方も異なっている。だがどの地方もまぎれもなくチベットの一部分である。ダライラマ14世はアムド地方(青海省)の出身である。

 

だが現実問題として、現在チベットは中国共産党の支配下にあり、中国共産党による独自の行政区分が設置され、旅行ガイドなども概ねそれに従って説明されている。であるからして我々外国人がチベットの各地方を理解するとき、中共による行政区分のほうがわかりやすい場合もあるので、以下において説明することにしよう。

 

 

 

 

上の図は中国共産党支配下におけるチベット自治区と青海省。この二つについてはわかりやすいと思う。なお、この画像を加工するに当たって、オリジナルから台湾を削除した。

 

 

 

 

 

上の図は四川省である。緑色がアバチベット族・チャン族自治州。黄色がガンゼチベット族自治州。桃色が涼山イ族自治州のムリチベット族自治県。白い部分がその他の四川省である。アバ州とガンゼ州で四川省の総面積の約半分を占めるが、人口の占める割合は2%強に過ぎない。さらに四川省には、綿陽市、雅安市にもチベット族の自治県や自治郷が存在する。

 

 

上の図は雲南省。黄色がデチェンチベット族自治州である。雲南省は少数民族というイメージが定着しているが、デチェン州を組み込んだことで雲南省の多様性がさらに増している。

 

 

上の図は甘粛省。黄色がケンロ州である。甘粛省は中国人が多数派であるものの、シルクロードの要衝であり、中国の古都を抱える陝西省、モンゴル(内モンゴル)、チベット(青海省)、寧夏回族自治区、東トルキスタン(新疆)と接しており、歴史的にも多様な民族が入り混じってきた。

 

このようにチベット人はチベット自治区のみならず広範な地域に分布している。自治区以外にも自治州、自治県、自治郷などがあって非常に複雑である。それぞれの州や県については今後、おいおい説明して行きたいと思う。

 

 

 

 

 

 




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