主張すれば主張するほど醜態をさらす中国政府
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ラサでは暴動は概ね収まったようだが、チベット各地での抗議行動は依然として終息していない。17日には甘粛省や四川省でチベット人による抗議デモが行われ、18日には甘粛省瑪曲県でデモ参加者19人が中国当局によって虐殺された。これで中国が虐殺したチベット人の数は計99人に達した。 死亡者150人以上との情報もあるが、私は残虐行為を批判する際は、むやみに確信の持てない過大な数字を挙げず、確実にこれだけの犠牲者が出たと主張できる数字を挙げる方針である。とはいっても中国政府の発表する情報は全く話にならないので、亡命政府が発表する信頼できる情報を引用することにしている。 中国当局による弾圧は日に日に強まっている。すでにラサでは数百人が拘束された。寺院は概ね厳重な管理下におかれ、幹線道路では検問が行われている。チベットは再び北朝鮮のような恐怖社会に陥ってしまった。 さてさて3月18日、全国人民代表大会閉幕後に行われた記者会見で、温家宝首相は以下のように述べている。産経新聞から引用させていただく。
「ダライ集団が組織して謀議を重ね、綿密に策動し扇動して起こした事件であり、ダライ集団の"独立を求めず和平対話"との標榜が嘘であることを暴露した」
私はこれから温家宝の発言にコメントするわけだが、そのまえに誤解されないように言っておくことがある。私は個々の中国人や中国文化を全面否定するわけではないことを留意していただきたい。 話を本題に戻すが、中国人以外で温家宝のこの発言を信用する人間はほとんどいないだろう。そりゃあわが国の総理大臣や閣僚だって決して世界に誇れるようなレベルではない。それにしても、一国の首相たるものがダライラマが策動しただの、チベットを平和解放しただの民主改革を実施しただのという破廉恥なコメントを世界に向けて堂々と発言しているのを見ると、私は本当に中華人民共和国の国籍でなくて良かったと思う。もしも私が中国人で、なおかつ外国に居住していたら、あまりに恥ずかしくて惨めで外も歩けないに違いない。 また中国メディアはいっせいにダライラマ批判キャンペーンを展開、例えば西蔵日報は「ダライ・ラマ集団は人民の利益を顧みず、民族団結と祖国統一にそむき、宗教と人権の衣を装った反動的本質を暴露した。これは生きるか死ぬかの闘争だ。違法分子は容赦しない」と述べている。他の主要メディアもだいたい同じ論調だ。この国の文明度は文化大革命終結後もろくに進歩していない。国内向けには確かにこれで安定が図れるのかもしれない(少なくとも中国人に対しては)。だが中国政府、マスコミが主張すれば主張するほど、世界に醜態をさらし、笑いものになるだけであることにいい加減に気づいたらどうだろう。 いうまでもなく、中国以外の国では中国政府の主張は全く信用されていない。それどころか度重なる中国政府のチベット弾圧に対し、全世界で抗議行動が拡大している。3月10日以降、チベット(注1)、中国(注2)、インド、ネパール、日本、台湾、アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダ、ベルギー、スイス、チェコでチベット人、及びチベットサポーターが抗議活動を行った。 東京では3月22日、今月に入って4回目の抗議行動が予定されている。一人でも多くの参加を望んでいる。詳しくは以下のページで。 注1 ここでいうチベットとは青海省、四川省、甘粛省のチベット自治州を含む。
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『中国はいかにチベットを侵略したか』 マイケル・ダナム著 講談社インターナショナル \1890
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