ペマ・ギャルポ氏講演会「今チベットで何が起きているのか」
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5月10日、ちょうど胡錦濤が5日間の訪日日程を終える日に、東京都中野区のZEROホールでペマ・ギャルポ氏による「今、チベットで何が起きているのか」と題する講演会が開催された。 講演会は午後7時に開会。会場は70人程度の収容人数であったが、100人近くが押し寄せ、急遽椅子を増やして狭い会場に参加者がぎっしりと詰まった状態になった。 以下はペマ・ギャルポ氏の講演の要約である。 だが1951年に中共の侵略によって17か条協定を強引に結ばされ、その後はダライラマもパンチェンラマも全人代に参加するなど、1951年から1959年に確かにチベットは中国の一部分となった。だが中国側が常に17か条協定を守らなかった上、1959年にインドに亡命したダライラマ14世が17か条協定の破棄を宣言したことから、もはやチベットは法的に見て中国の一部分とは言えない。 その後に中国共産党がチベットに対して行った残虐行為については、国連でも1960年、1961年、1963年にチベットに非難決議が出されている(残念ながら中国は当時国連に加盟していなかった)。また世界中の国会で40以上の非難決議が出されている。 ダラムサラの亡命政府が発表する120万人の虐殺はアムネスティなど世界が認めている事実である。ただしこの数には1978年以降の数は含まれていない。今年3月の騒乱以降でも少なくとも207人が虐殺されている。虐殺だけでなく性的暴力や竹の棒を爪に刺したり、指の間に物を挟んで締め付けるなどの想像を絶する拷問が行われている。東チベットではデモ行進をやめさせようとした80歳の老人が頭を殴られ、病院で治療を受けることもできず間もなく死亡した。 中国はチベットにたくさんの道路を造ったなどと主張しているが、その道路を走っているのは大半が軍用道路で、チベットで木材を大量に伐採して中国に運んでいるのである。 さらにペマ・ギャルポ氏は、チベット問題は単純な人権問題ではない。チベットはインド、ネパール、ブータン、ミャンマーなどと国境を接しており、核廃棄物処理場などもある。チベット問題はアジア全体の安全保障に関わる問題なのだと主張した。 講演のあとは質疑応答が行われた。聴衆の一人が、チベット問題をアムネスティのような左派系団体に頼っていては良くないのではないかと質問。ペマ・ギャルポ氏は、アムネスティには正直に言って感謝している。ただしこの数年はデモ行進には参加していない。理由は日の丸を掲げてはいけないからだという。日本国内で日本と共同でデモ行進を行うのだから本来は日の丸も掲げるべきだと思う。とはいえ、アムネスティの活動もチベットのためには役に立っており、これは致し方ないことである。皆様もぜひいろんな団体を作ったりして、もっともっと大きくなってほしい、ということを述べた。 他の聴衆が、「ダライラマ法王は北京五輪開催を支持すると述べているが、これについてどう思うか」と質問。ペマ・ギャルポ氏は、法王は非常に苦しい立場にいる。法王は中国がオリンピック開催に相応しい国になってほしいと考えており、そのためには我々がもっともっと声を挙げていくしかないと述べた。 ペマ・ギャルポ氏は雑誌のインタビューがあるため、午後8時10分ごろ、会場を後にし、司会の吉田康一郎氏がダライラマ法王日本代表部事務所のホームページから、チベットで行われている身の毛もよだつような拷問の数々を紹介した。 午後8時半ごろ講演会は終了した。今回は会場に入りきらないほどのたくさんの聴衆が訪れた。主催した吉田康一郎都議も、チベット問題でこれほどの参加者が集まるとは予想できなかったのであろう。だが今や日本ではチベット問題は拉致問題を上回るほどの国民的関心事となっている。この勢いを今後も継続していかなければならないと思う。
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