アジアン・カルチャー・フォーラム講演会 東トルキスタン共和国

 春節とチベット歴の正月が重なった2007年2月18日、私は自宅から2時間半かけて千葉県印西市で行われるアジアン・カルチャー・フォーラムに参加した。この日、千葉ニュータウン中央駅から徒歩5分のところにあるイオン千葉ニュータウンショッピングセンター3階のイオンホールで、滅多に機会のない東トルキスタンについての講演が、政治学者の殿岡昭朗先生によって行われることになっていた。

会場となったイオンホールのあるイオン千葉ニュータウンショッピングセンター
 まずはアジアン・カルチャー・フォーラムについて簡単に紹介させていただきたい。同フォーラムは鈴木勝夫氏が代表を務め、活動を開始したのは昨年3月で、短大生を引き連れて台湾を見学したのが始まりであった。その後も台湾との交流を続けていたが、昨年9月に中国四川省出身のジャーナリスト石平氏を講師として初の講演会を開催。それをきっかけに台湾以外の国についても扱うようになり、2回目はチベット人のペマ・ギャルポ氏の講演会、そして今回は殿岡昭夫氏によって東トルキスタンがテーマとして扱われることになった。以下に講演内容を簡単に要約しよう。
 殿岡先生はチベット、東トルキスタン、南モンゴルの解放運動、さらには中国の民主化運動に力を注いでいるが、それはもちろん彼らのためでもあるのだが、それだけでなく我が日本が独立国家として存続していくためにも、中国少数民族との連携が重要であることを強調していた。中国の膨張主義は日本をも飲み込もうとしているが、我々日本人がこの危機に対処するためにも、中国の少数民族問題が重要性を帯びてくるのである。
 現在中国共産党の実効支配化におかれているチベット、東トルキスタン、南モンゴルの諸民族は、かつてはアジア屈指の大帝国を築いた歴史を有している。そして中華人民共和国に併呑された今日においても、民族問題の深刻な地域である。これら3カ国を日本が味方にできれば、情勢は日本にとって非常に有利となりうるのである。
 これら3カ国への中国共産党の侵蝕は極めて深刻な状況にある。内モンゴル自治区ではモンゴル人の割合はわずか

講演者の殿岡昭夫先生

15%、中国人が圧倒的多数を占める中で、モンゴル人の中国化が進み、伝統的な遊牧生活がなくなりつつある。チベットは中国共産党に併合されて以来120万人が虐殺され、青海省や四川省アバ州などに分割され、これらの地域ではすでに中国人が多数派となりつつある。チベット自治区は幸いまだチベット人の割合が9割を維持しているが、昨年の青蔵鉄道開通によって今後は大量の中国人の入植が予想され、チベット人も満州や南モンゴルと同じ運命を辿る可能性がある。
 東トルキスタンのウイグル族は最も中国共産党と激しく戦っている民族である。ウイグル人たちは満州、南モンゴル、チベットの惨状を目の当たりにして危機感を募らせている。だが東トルキスタンでも中国人の入植は急ピッチで進み、現在では中国人の占める割合は全人口の5割とも6割とも言われている。すでにウイグル人たちは中国語ができないと就職が困難な状況に追いやられている。さらにモスクが閉鎖されたり、聖職者の人数が制限されたり、ラマダン(断食)の時期に学校給食を強制されたり、豚肉を強制されたりとイスラム教徒への弾圧は今も続いている。
 ウイグル人は今が正念場と捉えている様だ。このまま中国共産党による侵蝕が5年から10年続いてしまえば、満州やモンゴルと同様取り返しのつかない事態となってしまう。逆に中国政府は、これから5年、10年を乗り切れば独立運動を完全に抑え込めると見ている。
 91年にソ連邦が解体し、中央アジア5カ国が独立した際、東トルキスタンの人々は大きな期待を抱いた。中央アジア5カ国のうち、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタンは東トルキスタンと同じチュルク系の国家だ。共産主義のソ連邦が解体して中央アジアに4つのチュルク系国家が独立できたのだから、同じ共産主義の中華人民共和国も近々解体し、独立できるのではないかという期待を抱いたのである。だが現実はそうならなかった。その後も中国は経済発展を続け、東トルキスタンにとっては石油、鉱物資源の搾取、中国人の大量入植という事態を招いたのである。さらに頼みの中央アジア諸国も、中国が主催する上海協力機構によって取り込まれてしまった。そこで東トルキスタンでも、自分たちの力で独立を勝ち取ろうと言う機運が盛り上がることになる。一部の人はアフガニスタンへと渡り、武装闘争へと突き進む。一部のものは平和的にデモ行進を行い、中国共産党からの過酷な弾圧を受けることとなる。だが9・11テロ以来、平和的に活動している東トルキスタン・イスラム運動さえも、頼みのアメリカからテロリストの烙印を押され、苦境に立たされているのが現状である。

会場の様子
 こういった状況の中、日本の役割はますます重要になるであろう。日本はあまり目立たないものの、着々と対中包囲網を築こうとしていると殿岡氏は指摘する。小泉前総理は退任直前にモンゴルと中央アジア諸国を訪問したし、日本の政治家の多くがインドを訪問するなど、日本と中国周辺諸国との関係が強化されつつある。『文明の衝突』の著者であるサミュエル・ハンチントンによると、日本は世界で唯一、一国家で一文明を築いている。だがハンチントンはさらに、このままいけば日本文明は中華文明に呑み込まれるという不気味な予測をしている。日本が中国と対等に付き合うためにも、そして中華人民共和国内の諸民族が自由で豊かな生活をするためには、中国の現体制を変えなければならない。中華人民共和国を解体し、7つか8つの国家に分裂してこそ、日本人、チベット人、ウイグル人、モンゴル人、そして中国人自身に真の平和と繁栄が訪れるのである。
 その後10分間の休憩を挟んで質疑応答が行われた。卯里通彦氏が、中国人の民主活動家たちは中国国内の民族問題についてどのような見解を持っているのかと尋ねた。殿岡氏は昨年ドイツで開催された中国民主化フォーラムに参加した経験をとりあげ、率直に言って中国民主活動家の多くはチベットや東トルキスタンは中国の不可分の領土であると頑なに考えている人が多いことを指摘し、今後は中国人との対話もしていきたいと抱負を述べられた。さらに私が、世界中のイスラム教徒はアメリカを憎んでいるが、なぜ東トルキスタンで弾圧を行う中国共産党を非難したり、反中デモをやったりしないのかと質問した。それに対し殿岡氏は、東トルキスタンの活動家はアメリカを最も頼りとしてきたことを指摘した。その一方で例えばサウジアラビアなどは表面的には中国と仲良くしているものの、ウイグル人にも援助をするなど、やはりイスラム教徒の連帯感というものが存在することを強調した。
 こうして約2時間ほどで第3回アジアン・カルチャー・フォーラムは終了した。今まで私は台湾・反中共・チベット・北朝鮮拉致問題などのイベントに参加してきたが、東トルキスタン関連は今回が始めてである。第4回目のアジアン・カルチャー・フォーラムは5月に予定されている。テーマは未定だが毎回質の高い講演会を開催する同フォーラムを今後も応援して行きたいと思う。
 残念ながら我が国では台湾やチベットと比べると東トルキスタンについてはその国名さえもあまり知られていないのが現状である(最近では中国政府に反感を抱く保守系の人たちからはその存在が認知されつつあるようにも思うが)。まずは知る、知ってもらうということから始めなければならない。私が思うに、何らかの形で中国共産党に反対する運動(台湾、チベット、東トルキスタン、法輪功、民主活動、靖国、歴史認識、尖閣、東シナ海の資源、環境破壊など全て含む)の多くは単独では力が貧弱である。もちろん一個人、一団体には時間、労力、資金面で限界があるのでありとあらゆる諸問題を取り上げるのは難しい。そこで理念を共有する各団体の連携をもっと強めていくべきではないだろうか。例えば東トルキスタンと直接関係ない団体のイベントで、東トルキスタン関係者を招待して、挨拶代わりに5分か10分程度でもいいので壇上で演説してもらう。このような連携ができれば双方にとって利益になると思う。
 私は決して中国や中国人が嫌いなわけではない。だが中国共産党暴虐独裁政権を打倒することは、全てのアジア諸国平和と繁栄に合致すると信じている。

殿岡事務所ホームページ
http://www.tono-oka.jp/

 





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