人権侵害に加担する米大手ポータルサイト

 中国のインターネット利用人口はすでに1億人を超え、世界第二位となっている。理論上、瞬時に世界中のどこにでもアクセスできるインターネットは中国の言論と報道に大きな影響を与えることが期待されているはずであった。ところが現実には、中国共産党独裁政権は30万人のインターネット警察を24時間体制で監視させ、中国共産党政権にとって都合の悪い言論をチェックしている。それだけの人員がいるならば、もっと中国社会の隅々にまではびこる様々な不正、腐敗、犯罪行為を取り締まることにその人的資源を用いたほうがよっぽど社会全体の安定につながると私は思うのだが、本質的な邪教でありテロリストである中国共産党には初めからそのようなこと期待すべくもないようだ。
 近年、中国共産党は時代に真っ向から逆らうかのように言論統制を強めている。現在約80人の中国人がネット上での言論を理由に収監中と言われている。94年に李登輝台湾総統(当時)は作家の司馬遼太郎氏との会談で「台湾に生まれた悲哀」について述べたが、今私は、13億の人々の「中国人に生まれた悲哀」というものを考えずにはいられない。何年か前、私は2チャンネルでのなかで興味深い投稿を見たことがある。投稿者は幼いころは母に叱られるとき、「そんなことをしていると来世で支那人に生まれちゃうよ」と注意されたという。その話は架空の作り話かもしれないし、実話だとしても単なる笑い話として投稿したものかもしれないが、どうも今の私には笑い話とは受け取れない。1949年以降の中国の状況を顧みたとき、中国に生まれた人々というのは本当に前世で悪いことをしたのではないか、だから中華人民共和国に生まれてきてしまったのではないか、という風に私は彼らの境遇を哀れに思わずにはいられない。
 今アメリカでは、ヤフーやグーグルなどの大手検索サイトが中国において中国共産党の言論統制に技術協力していたことが明らかとなって問題となっている。「台湾独立」「ダライ・ラマ」「天安門事件」「法輪功」など、千語近くにも上るキーワードが使用禁止となっていたのだ。これでは何のためのインターネットなのか理解できない。
 さらに恐ろしいことに、昨年秋には、ヤフーが中国当局に迫られて中国人記者のメール接続情報を渡したため、この記者が禁固刑に処せられたという事件も明るみに出た。インターネットとは必ずしも安全なものではなく、情報漏えいの危険性を常に孕んでいることは確かだが、よりによってメールの内容を大手ネット企業が独裁政権に提供するとは何事であろうか。これは重大なプライバシーの侵害であり、人権侵害である・
 アメリカは自由の国のはずである。自由と民主主義を最高の価値観としているはずである。自由と民主主義のメッカであるはずのアメリカの、21世紀の情報化社会をリードすべきネット企業が封建的独裁政権の情報統制に協力するなどあってはならないことだ。本来ならば大手ポータルサイトは中国共産党の情報統制に抵抗し、中国大陸に自由と民主主義の旋風を巻き起こすべきなのだ。ところが実際には逆のことをしている。
 これら大手ポータルサイトに対して全く同情できないわけではない。あらゆる業種であれ、不正と腐敗が蔓延る中華人民共和国という封建独裁国家でビジネスを展開するためには、ある程度正義や倫理といった価値観を捨てないことにはやってられないであろう。私も中国での生活経験はあるから多少理解できなくはない。
 だがそれにしたって、やはりヤフーやグーグルやマイクロソフトとしては、民主主義の弾圧に対して可能な限りの抵抗をすべきだ。そうしてこそアメリカは真の民主主義国家といえるし、世界から尊敬されるはずだ。中国共産党の言論統制に協力することは、中国共産党の悪徳行為に加担し、中国人民をますます苦しめることになる。中国共産党封建独裁政権誕生から半世紀以上が過ぎているが、インターネットがこれだけ普及した今、インターネットは中国共産党を追い詰めるために用いるべきであり、中国共産党独裁政権を肯定化する手段となってはならない。
 近年、時代に明らかに逆行するかのように中国共産党政権は言論統制を強めている。先月には「中国青年報」の付属誌「氷点週刊」が発行停止処分となった。この時は中国の知識人、言論人、元共産党幹部などが猛反発し、中国共産党宣伝部に抗議声明を発表する異例の事態となった。「氷点週刊」は来月から復刊されることとなったが、結局編集長は更迭されるという。
 中国共産党の言論弾圧は海外にまで及び、2月8日には米国アトランタで大紀元の技術担当者が襲撃されて重傷を負うというテロ事件まで発生した。
 中国の報道の自由度は167か国中159位で(詳しくはこちら)、世界ワースト1ではないものの、今時中国ほど民主主義が未熟な国は珍しい。人口世界第二位で一人当たりGDPが中国よりも低いインドでは、選挙によって民主的、平和的に政権交代が実現されている。インドの例を見る限り、中国で民主主義が実現しないのは中国が大きすぎるからとか、人民がまだ成熟していないから時期尚早などという理由ではなく、中国共産党の悪政に問題があると言っていいだろう。今やイラクやアフガニスタンやサウジアラビアでも民主的な選挙が行われているし、しばしば「独裁的」と欧米のメディアで批判されるマレーシアでも反政府運動は公然と行われている。ミャンマーの軍事独裁政権は世界中から非難を浴びているが、そのミャンマーでも民衆は公然と反政府運動を行っているではないか。しかし中国でそのようなことをすれば命を失うか、辛うじて命を取り留めたとしても筆舌に尽くしがたい拷問を受ける覚悟が必要である。
 言論弾圧は間違いなく社会を停滞させ、国家を疲弊させる。中国共産党は中国社会、中国人民にとって害悪であり、何の役にもたっていない。私は急激な変化を望むわけではないし、「民主化」なるものが一夜にして可能ではないということぐらいは理解している。とはいえ、今の中国で必要なことは自由で多様な意見、正確で幅広い情報を社会に伝えていくことであろう。今のような言論統制を続けていけば矛盾がますます拡大し、中国に蔓延る社会悪や様々な問題をますます複雑にしていくだけである。

 


 




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